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月別アーカイブ: 2025年9月

天輝工業のよもやま話~第14回~

皆さんこんにちは!

天輝工業、更新担当の中西です。

 

~やりがい~

 

ECの急伸、SKU の多様化、短納期・翌日配達の常態化。倉庫・FC(フルフィルメントセンター)では、コンベヤ/ソーター/AS/RS/シャトル/AMR といった設備と、WMS・WCS・WES のソフトが連動して“流れ”を形づくっています。
その「流れ」を設計→据付→電気配線→ソフト連携→試運転→切替まで作り上げるのが物流設備工事。ここでは、発注側・現場側のリアルなニーズと、現場で働く人が感じるやりがいを、実務目線でまとめます。


1|まず把握:いま物流設備工事に求められる基本価値 🧭

  • 止めない:稼働中の倉庫を止めずにレトロフィット・段階導入。

  • 速い:短工期・夜間切替・ピーク前の立ち上げ(ランプアップ)。

  • 正確:誤出荷率の低減、在庫精度の担保、トレーサビリティ。

  • 安全:機械安全(E-Stop、インターロック)、高所・搬入の安全計画。

  • 省エネ:MDR(24V)や回生制御、待機のゾーン停止など。

  • 将来拡張:モジュール設計、レイアウト変更に強い IF・配線・床アンカー計画。

要するに**“流れの設計×工事×ソフト統合”を、確実に・速く・安全に再現**できる体制が評価されます。


2|発注者別のニーズ(荷主/3PL/デベロッパ)📌

① 荷主・EC事業者(D2C/リテール)

  • 波動対応:セール・繁忙期のピーク処理能力(+30% など)の担保。

  • 多品種・短サイクル:GTP やピースピッキングの最適化、歩行ムダ削減

  • 可視化:リアルタイム KPI(スループット、誤出荷、滞留)ダッシュボード。

  • LCC重視:初期費用だけでなく総保有コスト(電力・保守・部品)で意思決定。

② 3PL(受託運営・マルチテナント)

  • 汎用性:複数荷主・SKU に合わせて設定で切替できる柔軟性。

  • 切替手順の台本化仮設バイパス→段階切替→最終カットオーバーの計画とリハーサル。

  • 保守性:MTTR 短縮(交換時間・部品共通化)、24/365 の支援体制。

③ 物流不動産・デベロッパ

  • 躯体・法令整合:梁・スプリンクラー・非常動線・床荷重と機器の干渉ゼロ。

  • テナント入替のしやすさ電源・ネットワーク・アンカーの再利用性。

  • 環境認証貢献:省エネ機器・LED・回生電力活用の評価反映。


3|現場(施工側)のニーズ:勝ち筋は“工程統合力” 🛠️

  1. フロントローディング:3D/BIM・レイアウト・荷姿試験・シミュレーションで事前に当てる

  2. 電気・制御・ソフトの一体運用:盤容量・I/O・フィールドバス・WCS 連携を一つの設計書で。

  3. 安全と品質の型化リスクアセス→KY→保護柵→トルク管理→レベル記録→写真台帳を標準化。

  4. 夜間・短工期対応:**工程の“クリティカル 24h”**の段取り、応援要員・予備機材の“先置き”。

  5. 調達・在庫:消耗部材(ベルト・ローラー・センサー)の標準品化予備手配

  6. コミュニケーション:荷主・運用・保守・消防・建築の多者調整を回す PM 力。


4|技術的ニーズ(ハード×ソフト×サステナ)🔌🤖🌱

  • ハード:コンベヤ(ベルト/ローラー/スラット)、高速ソーター、AS/RS、ミニロード、シャトル、AMR。

  • ソフト:WMS・WES・WCS の協調制御、優先度・波動・締切のロジック運用。

  • 省エネ:MDR ゾーン停止、回生電源、インバータ最適化、エネルギー原単位のKPI化。

  • 予兆保全:振動・温度・電流のログで止まる前に直す

  • 標準 IF:メーカー混在を前提に、データ連携・異常コードの共通化


5|“やりがい”はどこにある?(役割別)✨

① プロジェクトマネージャー/施工管理

  • 止めずに切り替える台本を描き、時計どおりに現場が動いた瞬間の快感。

  • 多ベンダー・多職種を束ね、予定通り Go-Live→KPI が立ち上がる達成感。

② 据付・機械工

  • ミリ単位のレベル出しやアンカー引張値が狙い通りに決まる手応え。

  • カーブ・合流の微調整で**“詰まりゼロ”のライン**が完成した瞬間の気持ちよさ。

③ 電気・計装(盤・配線・I/O)

  • 非常停止/インターロックが想定どおり機能し、安全が設計で担保される誇り。

  • 断線・ノイズ・位相ズレを潰して一発復帰できる“現場力”が評価される。

④ 制御・ソフト(WCS/WES)

  • 優先度・波動設定でスループットが目に見えて伸びる気持ちよさ。

  • 仕様書通りだけでなく、運用と対話しながらチューニングする面白さ。

⑤ メンテナンス・保全

  • MTBF を伸ばし、MTTR を詰める。夜間の呼び出しが減るほど「仕組みで守れた」実感。

  • 部品標準化作業標準書がセンターの可用性を押し上げる貢献感。


6|KPIで語る:価値の“見える化” 📊

  • スループット(ケース/時・ピース/時)、UPH(人時当たり生産性)

  • 可動率・OEEMTBF/MTTR誤出荷率(PPM)

  • リードタイム/在庫回転エネルギー原単位(kWh/出荷)

  • 安全指標(ヒヤリハット件数、労災ゼロ日数)
    → 立上げ時は**“初週・初月・第1四半期”のKPI目標**を合意し、日次の可視化で早期安定へ。


7|ミニ事例(フィクション)📘

  • Case A|止めずに増設:夜間 3 回の段階切替
    既存ラインに並走する仮設バイパスを敷設。夜間に合流部だけ切替→翌朝は通常稼働を3夜で実施。ピーク前に**+25%** の処理能力を確保。

  • Case B|誤出荷 PPM を 1/3 に
    WCS に重量検品→画像判定→寸法計測を追加連携。異常時のバイパス設計も同時実装し、止めずに精度向上

  • Case C|エネルギー原単位 18% 改善
    MDR のゾーン停止と回生電源、待機モードの閾値見直しで使用電力を削減。年間の電力コストCO₂を同時に圧縮。


8|よくある“落とし穴”と回避策 🧯

  • 荷姿の想定不足:最小剛性・ソリ・袋物の滑りやすさを事前試験

  • IFの曖昧さ:アラームコード・復帰手順・データ粒度を設計段階で統一

  • 消防・建築との後追い調整避難動線・防火区画・スプリンクラー覆いは最初に合意。

  • ケーブルトレー容量不足:将来増設分まで余力設計

  • 夜間工事の人員・部材不足予備品先置きと**直前の“ドライラン”**で吸収。

  • 切替当日の“想定外”ロールバック手順判断権限マトリクスを事前決定。


9|提案を通す“3プラン”の作り方(Good/Better/Best)🧪

  • Good(最短・省手間):ボトルネック周辺の局所改造+既存制御流用。

  • Better(波動対応)GTP 導入/シャトル増設、WES で優先度制御を実装。

  • Best(将来拡張)AMR+標準 IFによる柔軟レイアウト、回生・予兆保全まで込みのパッケージ。
    → それぞれにKPI 期待値(スループット・PPM・kWh/出荷)とLCCを添えると、意思決定が進みます。


10|キャリアパスと資格(伸びる人の共通点)🛤️

  • キャリア例:機械据付 → 電気計装 → 施工管理 → PM/ソリューションアーキテクト。

  • 有用資格:電気工事士、施工管理技士、フォークリフト・高所作業車、玉掛け、危険物(倉庫用途)など。

  • 伸びる人の共通点

    • 配線より設定”の発想(ハードは最小変更、ソフトで流れを変える

    • 安全第一を数字(KY・点検・記録)で語れる

    • 図面と現物を同時に見る癖、写真台帳の習慣


11|今日から使える:ヒアリング&切替テンプレ ✅

要件ヒアリング(抜粋)

  • 目標スループット/ピーク倍率/締切(カットオフ)

  • SKU 数・荷姿(最小/最大・剛性・袋物比率)

  • 誤出荷・在庫精度の現状と目標値

  • 既存設備のメーカー・IF・盤容量・AP 配置

  • 工事時間帯・消防/建築協議の要否・搬入動線

  • 省エネ目標(kWh/出荷)・環境認証の要件

切替当日“台本”(骨子)

  1. 直前停止 → 2) ライン隔離 → 3) 新旧 I/O 点検 → 4) 無貨試験 → 5) 代表 SKU 貨流し → 6) 貨物増量 → 7) 本稼働宣言

  • Go/No-Go 閾値ロールバック手順復帰後の追加点検を明記。


12|ニーズに応えるほど、やりがいは大きくなる 🌟

物流設備工事は、ハード×ソフト×運用をつなぎ、**“止めずに速く正確に”**を現実にする仕事。
KPI で価値を可視化し、安全と品質を“型”で守り、短工期で立ち上げる
その積み重ねが、感謝(現場からの“ありがとう”)と指名・紹介を生み、
「流れを造るプロ」としての確かなやりがいになります。

 


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天輝工業のよもやま話~第13回~

皆さんこんにちは!

天輝工業、更新担当の中西です。

 

~変遷~

荷物は“勝手に”流れません。コンベヤ、仕分け機(ソーター)、ラック、シャトル、WMS/WCS、そして現場を束ねる施工・保守体制——
物流設備工事は、モノの流れをデザインし、据え付け、動かし続けるための総合技術です。
ここでは、戦後から現在、そしてこれから先の変遷のキモを、工事・運用の視点で一気に整理します。


1|1960〜1980年代:メカラインの時代(量産・大量輸送の最適化)⚙️

  • コンベヤ主導:ベルト/ローラー/スラット等の連続搬送で“人が動く→モノが動く”へ転換。

  • パレット化・フォークリフト標準化:荷姿を揃えてハンドリングを効率化。

  • **在庫は倉庫で“貯める”**前提:大箱中心・定期納品。

  • 施工は機械据付+電源工事が主、制御はリレーやシンプルPLC。
    狙いは“安定稼働”と“搬送距離の短縮”。変化には弱いが、とにかく強靭。


2|1990〜2000年代:自動化・情報化の第一波(AS/RS×WMS)📊

  • 自動倉庫(AS/RS)・ミニロードの普及:高密度保管×自動入出庫で省人化。

  • 高速ソーター(シュー/クロスベルト等):宅配・アパレル・通販黎明期を牽引。

  • WMS(倉庫管理)×WCS(制御)で在庫と搬送の同期が可能に。

  • 施工は電源・制御・ネットワークの三位一体へ。FAT→据付→配線→試運転→SATが定型化。
    狙いは“処理能力の最大化”と“在庫精度”。ただし多品種少量にはまだ硬直的。


3|2010年代:EC爆増で「多品種・短サイクル」対応へ(シャトル×GTP)🛍️

  • シャトル・シャトルラックの台頭:柔軟なロケ入替高スループットを両立。

  • GTP(Goods to Person):作業者が歩かず、商品が人に来る方式で歩行ムダ削減

  • WES(Execution)が登場し、WMSと設備制御のオーケストレーションが課題に。

  • レトロフィット需要:稼働中センターを止めずに段階導入(夜間工事・仮設ライン・切替手順)が定石に。
    狙いは“リードタイム短縮”と“波動対応”。工程統合力のあるSIer・施工会社が評価される。


4|2020年代:ロボティクス×AI×柔軟性(AMR・ピースピッキング)🤖

  • AMR(自律搬送ロボット)/AGV配車・経路をソフトで最適化。レイアウト変更に強い。

  • ロボットピッキング:画像認識・吸着/グリッパでバラ積み対応が前提に。

  • マイクロフルフィルメント/ダークストア:都市近接・超短納期向けの小規模自動化

  • 可視化・予兆保全:センサー・ログで故障予兆→計画停止へ。

  • サステナ対応MDR(24Vローラー)回生制御高効率モータで電力を削減。
    狙いは“柔軟性×省エネ×レジリエンス”。ソフトと工事の“二刀流”が競争力に。


5|工事の中身も進化:アナログ据付→“データで当てる”据付へ 🧭

  • フロントローディングシミュレーション/デジタルツインカーブ・勾配・合流を事前検証。

  • BIM/3Dで梁・柱・ダクト・スプリンクラーと干渉ゼロ設計。

  • 切替(カットオーバー)設計:黒子の工事こそ要。仮設バイパス→段階移設→最終切替を台本化。

  • FAT/SATの高度化処理能力試験・リジェクト率・遮断復帰まで合意指標で確認。

  • 教育・立上げ(ランプアップ):動画マニュアル・標準作業・KPIボードで初日から安定稼働


6|安全・品質・レギュレーション:多層の“当たり前”を積み上げる 🛡️

  • 機械安全:非常停止・感知・L/O/T/O、防護柵・立入管理の設計反映。

  • 消防・電気・建築スプリンクラー/感知器配置・盤容量・非常電源を前倒し協議。

  • リチウム電池・エアゾール等の危険物対応:保管区画・温湿度・排気・防爆機器の検討。

  • 耐震・アンカー設計:ラック転倒防止、コンベヤ脚のブレース上下階貫通部の防火処理

  • 品質保証検査成績書・トルク管理・レベル記録写真台帳で“見える品質”。


7|運用のKPIが設計を変える:設計→施工→運用の“循環”♻️

  • OEE(総合設備効率)=可動率×性能×品質

  • MTBF/MTTRピッキング生産性(UPH)誤出荷率エネルギー原単位

  • KPIを設計段階から目標設定し、稼働ログ→改善を回すことで投資対効果を最大化。

  • 予兆保全(振動・温度・電流)で止める前に直す運用へ。


8|業界別に見る“変遷のツボ”📦🍎👚💊❄️

  • 宅配・CEP:ソーター高速化→AMR前仕分けラストワンマイル連携へ。

  • アパレル:波動大・SKU多、GTP+ロボピッキングで省人化。

  • 食品・日配コールドチェーン設備・水や結露に強い機器・洗浄性が肝。

  • 医薬・化粧品シリアル・温湿度トレーサビリティ、誤出荷ゼロのバリデーション。

  • ホームセンター・家具:長尺・重量物向けクレードル搬送ラック耐震が優先。


9|サステナ&レジリエンス:設備投資の“新しい軸”🌱

  • 省エネ:MDRゾーン停止、インバータ最適制御、回生電力の再利用

  • 素材・梱包:通い箱化・緩衝材削減、自動梱包の最小寸法化で輸送効率UP。

  • BCP二重化電源・ネットワーク冗長バイパスラインで停止リスクを緩和。

  • モジュール化:需要に合わせて増設・撤去が容易な“差し替え設計”。


10|これからの10年:標準化と協調制御、そして人の活かし方 🔮

  1. 協調制御:複数メーカー設備・ロボットの標準IFで一体運用。

  2. 需要変動の即応ソフトで流れを切替(優先度・波動・締切)——“配線より設定”。

  3. 人×ロボの協働:人は試行錯誤と品質判断、ロボは搬送・反復——適材適所の再設計

  4. ラストマイル直結:拠点内で配送ルート最適まで連動し、倉庫の外へ最適範囲が拡張。

  5. 全体最適×LCC:初期費用より総保有コストと可用性で意思決定。


11|現場で使える:計画〜切替チェックリスト ✅

計画段階

  • 処理能力(ケース/ピース/時)、波動、ピーク率、将来余裕(+20〜30%)

  • 荷姿・最小/最大寸法・最小剛性、バーコード/ICタグ方針

  • 設備配置3Dと干渉・避難動線・スプリンクラー覆い確認

  • 盤容量・分電・非常電源、ネットワーク冗長、AP配置

  • 消防・建築協議、既存との工期重複前提の切替計画

施工・試運転

  • 据付レベル・アンカー引張・トルク記録、保護カバー・表示類

  • I/O試験、インターロック、非常停止、停復電復帰

  • 連携試験(WMS/WES/WCS/搬送・ソーター・ロボ)

  • 量実績テスト(代表SKU×代表荷姿×代表ケース)

  • 教育(運転・保全・清掃)、写真台帳・図面・部品表引渡し

切替・安定化

  • 仮設バイパス→段階切替→最終切替の台本化

  • 初週の常駐保守・KPI計測(可動率・誤出荷・エネルギー)

  • 不具合の是正リードタイムと要因分析の定例化


12|まとめ:物流設備工事は“流れを造る”産業

大量・定時の時代から、多品種・短サイクル・波動対応の時代へ。
装置はメカだけでもソフトだけでも成立しません。設計→施工→運用→改善を循環させ、
**“止めずに、早く、正確に、低コストで”**流す仕組みを作ること——
それが、物流設備工事がこの先も果たすべき役割です。🚀

 

 


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